事業のさらなるグローバル展開を視野に
圧倒的ニッチナンバーワンとして顧客提供価値の創造を追求する
                        
                    
フジボウグループの現在と今後の期待について、社外取締役4名が座談会を行いました
Q1.中期経営計画「増強21-25」のこれまでの取り組みに対する評価と、次期中期経営計画における重要テーマについて、お聞かせください。

左から壷田社外取締役、ジャーマン社外取締役、佐藤社外取締役、小林社外取締役
小 林: 投資戦略やESG・SDGsへの取り組み、ROIC経営、株主還元方針など、個別のテーマごとに見ると、当社は着実に進化してきたと考えています。一方で、売上高や営業利益の数値目標の達成はまだ道半ばであり、シリコンサイクルなど外部環境の変化に左右されない、より強い競争力と収益体質の確立が課題です。次期中期経営計画では、自社の事業推進に懸ける強い思いを持って、コミットメントレベルを強化する必要があると考えています。
もう一つ、ホールディングスとして「何をもって社会に貢献していくのか」というミッションを明確にすることも大事です。それが、社内外に向けた分かりやすく力強いメッセージとなり、困難に直面した際の行動指針や、事業を見直す際の判断基準となるはずです。
ジャーマン:これまでの「増強21-25」の取り組みによって、“利益を生み出す仕組み”の基盤が文字通り強化されたと感じています。不透明で厳しい事業環境の中、経営陣は柔軟に対応してきました。また、ここ数年来、組織力やチームワークが強化され、各事業会社の経営陣とのコミュニケーションがよりフラットになったと感じています。こうした変化は、今後の成長にとって大きなプラス要素になると思います。
富士紡は新しい可能性に果敢に挑戦する会社であり、ユニークなアイデアを持ち、イノベーションを生み出せる人財が多く在籍しています。次期中期経営計画では「イノベーターの富士紡」を強く打ち出していくことが大事だと考えています。
佐 藤: 「増強21-25」に掲げた3つの方針のうち「収益機会の“増”加」については、研磨材事業と化学工業品事業における生産能力や研究開発力の強化、また生活衣料事業の一部を休止し、経営資源を研磨材事業に集中するなど、着実に実行してきたと評価しています。一方で、「提供価値の“強”化」や「DXの継続・深化による業務プロセスの革新」については、現時点では進捗状況が良く見えていないので検証し、残課題を把握したいと思います。
次期中期経営計画では、この5年間で実現したかったことがどれだけ達成できたのかをきちんと評価した上で、残された課題を確認し、今後の取り組み事項をセットすることが重要だと考えています。
壷 田: 私が社外取締役に就任したのは2024年で、その範囲に限った評価にはなりますが、事業ポートフォリオ改革を積極的に進めてきた当社の取り組みは素晴らしいと感じています。
次期中期経営計画については、バックキャスティングの視点ももちろん必要ですが、最も重要なのは、今後何が起こるかわからない事業環境の中で、何かが起きた際に、いかに迅速かつ柔軟に対応できるかだと考えています。そうした視点を踏まえ、必要な施策を盛り込んでいただきたいと考えています。
Q2. ガバナンス面における取り組みに対する評価と今後の課題について、お聞かせください。
佐 藤: 当社のグループガバナンスの特徴は、各事業会社の独立性や自主性を尊重しつつ、グループ全体を緩やかに束ねている点にあると捉えています。不確実性の高い状況下で、適時適切に対応できる力が求められる今、これは大きな強みになると思います。
ただし、富士紡グループが何を大事にしていくのかという軸は、共通認識としてしっかりと持っていなければなりません。今後の5年間は、グループ全体に共通する行動基準や指針、ビジョンなどを確実に各事業会社の経営に浸透させていくことが重要だと考えています。
ジャーマン: 私は2019年から社外取締役を務めていますが、執行側と社外取締役との信頼関係がどんどん強固になっていると強く感じています。遠慮なく自由に言いたいことが言え、聞きたいことが聞けています。それぞれの事業会社が自立しつつホールディングスがそれを束ねており、全体がよく見渡せるようになっています。今後の課題としては、経営戦略に関わる重要課題の議論に、より多くの時間を充てていくことだと考えています。
壷 田: 当社がよりスピード感のある経営を実現するためには、大幅な権限移譲によって執行側の裁量を拡大させるとともに、取締役会が冷静に監督・評価できる仕組みに改めることが必要です。今後、機関設計の検証・見直しにも取り組んでいくべきだと考えています。
もう一点、グローバルレベルのガバナンスの構築も重要課題です。どうしても目が行き届きにくい部分が出てくる中で、グローバル市場においてどのようにガバナンスを機能させていくか。次期中期経営計画においても、真剣に取り組んでいかなければなりません。
小 林: 私も同じ問題意識を持っています。会社の形態を変更するには時間がかかりますが、市場や社会の要請もあります。事前準備としての意識改革、グループ全体のマネジメントの在り方の改革に取り組んでほしいと思います。
Q3. グローバルニッチナンバーワンを目指すにあたり、当社が取り組むべき課題についてお聞かせください。
壷 田: グローバルニッチナンバーワンを目指すにあたっては、世界各地でマーケティングを行い、製品を開発して積極的に市場を開拓していくことが必要です。特に新規市場の開拓においては、自社がイニシアチブを持って積極的に、製品開発・生産・販売・サービスをしていく姿勢を持ってほしいと思います。
世界のどこかで事業が不調でも、好調な地域に軸足を移すことで、成長を持続できるのがグローバル企業の強みです。時間がかかるかもしれませんが、当社がそのような真のグローバルニッチ企業へと成長することを期待し、私も微力ながら貢献していきたいと考えています。
佐 藤: グローバル企業を目指す上で非常に大事なことは、世界のお客さまが何を求めているのかを常に把握し、それに対して自分たちに何ができるのかを追求し続けることだと思います。そのためには、「人」の力を最大限に引き出し、会社として活用していくことが求められます。社員の皆さん一人ひとりが生き生きと自由に自分の考えを述べ、それを戦略に反映させていくことが、今後ますます重要になっていくと考えています。
ジャーマン: 私は多くの企業とお付き合いがありますが、当社ほど外部のステークホルダーを大切にしている企業は少ないと感じます。一方、これからの時代は内部のステークホルダーも重要で、従業員のモチベーションを高め、ドメスティックなマインドをインターナショナルなマインドにしていく環境づくりが必要です。
もう一つ、高い目標を掲げ士気を高めていくことも重要でしょう。業績や従業員一人ひとりの貢献度に基づいた報酬制度への見直しも課題だと思います。
小 林: 当社が有する多様な事業分野の技術や業務プロセスを俯瞰的に整理し、お客さまのニーズと組み合わせることで、お客さまの期待を上回る製品やサービスを提供できるのではないかと考えています。強みである「コア技術」と「顧客対応力」の見える化を進めて、それをグループ全体の共通基盤として各事業会社が活用することで、これまでは生み出せなかったソリューションの提供が期待できると思います。次期中期経営計画において、このアイデアの実現に取り組んでいきたいと考えています。